リリィがいないと気づいたのは一昨日の夕方だった。
「まーそのうち帰ってくるだろう」
と思っていたら、丸一日経っても現れない。
オーナーは旅行中なのであまり大事にはしたくなかったが、仕方ない。
今は狩猟期なので、ハンターもいるし、檻や罠なども仕掛けられているから心配だ。
「この犬探してます」とかポスターを作ろうか。と思っていたら、オーナーからは、
「保健所に連絡してみて下さい。」
とのこと。
そうだ。今まで犬を飼ったことがないので思いつかなかった。
保健所というものがあった。
法治国家の日本では
罪人は刑務所へ。迷い犬は保健所へ。
というシステムなのだ。
さっそく調べてみると保健所はどうやら隣町の下田市に行かないとないみたいなので町役場に電話をかける。
「あー、迷い犬は清掃センターで聞いてみてください。」
なんだ?迷い犬はゴミと同じ管轄なのか!?
清掃センターに電話をかける。
「似たような犬が下田の保健所で引き取られたみたいだから連絡してみて下さい。」
おっ!ヒットか!?すぐに下田の保健所へ電話をかける。
最初からここに電話すればよかった。
「…しもだ…ほけん…じょです。(聞き取れないくらい小さな女性の声)」
「一昨日から犬がいなくなってしまったのですが。えーと白くて赤い首輪の犬です。」
「…今のところ届出はないみたいです…。」
「南伊豆で似たような犬がこちらに引き取れられていると伺ったのですが。」
「…届出はないみたいです…。見つかったらこちらから連絡します…。…では。」
ちょっとまて。こっちの電話番号をまだ言ってないだろう。
慌てて連絡先を伝える。
一時間後に電話があった。
「下田市保健所ですが(別の人の声)、昨日白くて赤い首輪の犬が南伊豆から引き取られていまして…。おそらくお宅の犬だと思うのですが。」
だから言ったじゃないか。
文句を言ってもしかたないので軽トラで下田へ向かった。
まあ元はといえばリリィが迷惑かけたのだ。
いた!
保健所の係の方によると、昨日の朝、通勤の車が走る国道を右往左往していた所、通報があり御用となったそうだ。
まあなんにせよ無事でなにより。
前科一犯
しばらくは鎖でつながれた生活を覚悟してもらうからな。
しかし、鎖を引きちぎろうとしながら、(首が絞まっているので)かすれた声で鳴いているのを聞くと、元はといえば人間のルールを押し付けているだけで、犬に悪気は全くないわけで。
にんともかんともです。
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